2019年11月18日

第9回 メイプルイン幕張の歴史を紐解く – その3

 

■はじめに
第7回第8回に引き続き、第9回目もメイプルイン幕張の歴史を紐解きます。今回は、ホテルが建設される前の様子や、第一期工事で誕生した現在の東館の軌跡を、当時の写真とともに振り返ります。

 

 

■メイプルイン幕張の建設地
下の2枚の写真は、ホテルが建設される前の様子です。写真の右下に薄く焼き付けられた日付を見ると、1991年(平成3年)6月7日であることがわかります。その当時、撮影した日を写真に映し込む機能を持ったカメラがありました…。

 

左側の写真は、計画地の北側に設置されていたホテルの建設をお知らせする看板です。よく見ると、「ビジネスホテル建設予定地」と書かれた上に、弧を描くようにアルファベットで「MAPLE INN MAKUHARI」と綴られています。「メイプルイン幕張」という名称は、計画段階で、すでに決まっていたことがわかります。

 

次に、右の写真を見て頂くとお分かりのように、メイプルイン幕張が建設される前の土地は、畑作を行う農地でした。左側の白っぽく光って見える場所は、主に苺を栽培していたビニールハウスです。この話は、前回のコラムで紹介した「計画趣旨」の中でも触れられています。また、この写真には、他にもいくつか茶色い部分が見えることから、約30年前の幕張本郷の駅前周辺には、畑がまだ残されていたのです。

 

この写真の撮影場所は、その角度から、当時すでに竣工していた駅前の「サンクレスト本郷」さんの上階ではないかと推察されます。写真の左に見える屋根が傾斜した建物は「日進ビル」さん、右の白い建物は、現在、ホテルの真正面に位置する「ワコービル」さんです。これらの建物は、メイプルイン幕張が完成する前に、すでに竣工していました。また、右端の建設中の建物は、現在の「リビエール本郷」さんです。

 

余談になりますが、過去の資料を確認したところ、この写真が撮影された1991年(平成3年)6月7日は、確認審査機関から「建築確認済証」が発行された日であることが判明しました。これにより、ホテルの建設が法的に認められたのです。建築主や設計者、また施工者にとっても、着工への幕開けとなる記念の日であったことから、工事を始める前の様子を残しておきたいという想いが込められた写真ではないかと思われます。

 

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▲ホテル建設を告知する看板(左)と畑作が行われていた計画地(右)|撮影:1991年6月7日

 

 

■地鎮祭
それから約10日が経過した1991年6月18日には地鎮祭が執り行われました。大型のテントが設営され、周囲に紅白幕も張り巡らされていることから、かなり大規模に挙行されたようです。また、ここではご紹介できないのですが、ホテルに保管されている地鎮祭の様子を撮影した写真を見ると、メイプルイン幕張の建設に携わる数多くの関係者に参列して頂いたことがわかります。

 

余談になりますが、インターネットの情報をもとに過去の暦を確認したところ、この日は火曜日ながら、大安であることが明らかになりました。建築にまつわるお祝い事を行う日取りの決め方には、いまも「六曜」を重んじる「しきたり」が残されており、地鎮祭や上棟式は、結婚式などと同じように、大安に行うことが吉とされています。メイプルイン幕張の地鎮祭も、その慣習に従って行われたのです。

 

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▲大安に執り行われた地鎮祭の会場(左)と式次第(右)|撮影:1991年6月18日

 

 

■第一期工事の記録
現在のメイプルイン幕張は、二つの建物から構成されており、それらは現在、渡り廊下によって結ばれています。その建設にあたり、工事は二期に分けられました。

 

第一期工事によって最初に誕生したのは、このコラムで紹介している現在の東館です。1992年(平成4年)6月末に完成致しました。また、建築確認審査機関による完了検査に合格したことを証明する「検査済証」は、7月1日に発行されていることもわかりました。今年は2019年ですから、いまから27年前のことになります。

 

着工から竣工までの間に撮影された写真の中から、以下、抜粋した8枚をご紹介致します。

 

記録写真_2.2_190717S4 記録写真_2.3_190717S4

▲地ならし|撮影:1991年6月27日                ▲仮囲い|撮影:1991年7月12日

 

記録写真_2.4_190717S4 記録写真_3.2_190717S4

▲基礎工事|撮影:1991年8月23日                ▲1階型枠工事|撮影:1991年11月29日

 

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▲上層階工事|撮影:1992年3月7日                ▲足場解体|撮影:1992年6月17日

 

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▲竣工式会場(左)と式次第(右)|撮影:1992年6月末

 

 

■東館の竣工と開業
これまでのコラムをご覧頂いてお分かりのように、メイプルイン幕張には、建設に関わる書類や資料がいまも数多く保管されています。その中でも貴重な記録の一つが竣工写真です。

 

以下の写真は、アルバムの中に長く保存されてきたため、特に内観写真については、いくらか変色が見られるものの、竣工当時のホテルの様子が良くわかります。

 

写真の撮影者については、残念ながら、このコラムの掲載までに明らかにすることはできませんでしたが、おそらく施工を手がけた「大成建設」さんからの発注を受けて撮影されたものではないかと思われます。

 

なお、下の写真に写るフロントやロビー、レストランは、第二期工事で完成した本館の開業後に改修が行われ、現在は主に研修室として利用頂いています。

 

竣工写真_東館_02_190612S6PM 竣工写真_東館_01_190612S6PM

▲竣工写真:西側                                  ▲竣工写真:北側

 

竣工写真_東館_05_190612S6PM 竣工写真_東館_07_190612S6PM
▲竣工写真:開業時のフロントとロビー               ▲竣工写真:同左

 

竣工写真_東館_10_190612S6PM 竣工写真_東館_19_190612S6PM

▲竣工写真:ロビー脇に併設されたレストラン            ▲竣工写真:上階のエレベーターホール

 

 

■開業を知らせる情報誌
ホテルの書庫には、メイプルイン幕張の開業を大きく知らせる幕張地区の情報誌も残されています。前回のコラムの「計画趣旨」にも書かれている通り、当時の幕張地区は、1960年代に始まった大規模な埋立てや造成が進み、1990年(平成2年)には、東京駅と蘇我駅を結ぶ京葉線が全通したことから、海浜幕張駅を中心とした新都心の開発が急速に行われていました。メイプルイン幕張は、そんな時代背景の中で開業を迎えたのです。

 

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▲メイプルイン幕張の開業を知らせる情報誌 「幕張エリア情報」|1992年7月版

 

 

■おわりに
「メイプルイン幕張の歴史を紐解く」と題し、第7回第8回の流れを受けた一連のコラムの3回目は、ホテルが建設される前の様子や、第一期工事の記録の他、竣工写真などを紹介させて頂きました。次回は、第二期工事の本館の建設についてお伝え致します。どうぞお楽しみに…。

 

 

■文責
一級建築士事務所 エネクスレイン

 

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