2017年12月16日

第3回 – 省エネルギー診断でターゲットを絞る! その1

第2回のコラムは、客室に内窓を設置することで、温熱環境を改善しながら結果的に暖房や冷房にかかるエネルギーを削減しようという試みについて、主に、客室の冬の環境がどのように改善されたのかという視点からの報告でした。内窓を取り付けることは、快適で省エネルギーなホテルを目指すための大事な取り組みの1つですが、一方で、化石燃料等から作られる電気やガスの使用量を減らしていくことも、とても大事なことです。今回紹介するのは、まさに実際に電気やガスを使う物をターゲットとした取り組みの報告です。

 

電気やガスを使う物をターゲットとした取り組みの場合は「ムダ使いをしないこと」、「適切な機器を選定すること」の2つがポイントになります。メイプルイン幕張では、これまでも客室照明のLED化、節水型シャワーヘッドの導入等を進めてきましたが、この先、もう1歩、2歩取り組みを広げていくには、取り組みの優先度、費用対効果等の視点から情報を整理する必要がありました。

 

そこで今回は、一般財団法人省エネルギーセンターで実施している、中小企業を対象とした、「電力や燃料・熱など総合的な省エネ行動をサポートする」無料省エネ診断に申し込みました。このサービスは全国の中小企業が対象で、年間の光熱費に関する情報とエネルギー診断の専門家による現地調査から、その施設にとって省エネ化に効果的だと考えられることを10つ提案してくれるというものです。

これから2回に分けて、その調査によって分かったことと、その後のホテルでの取り組み状況について、みっつデザイン研究所の廣谷が報告していきます。

 

■ 省エネルギー調査の内容

2017年2月2日、一般社団法人省エネルギーセンターから、エネルギー合理化専門員である小坂信二氏がホテルに来られて調査をしてくださいました。省エネルギー診断において調査の対象となるのは以下の3つです。

  1. エネルギーの使用実態  → 年間の電気、ガス、水道の使用量から調べます。
  2. 施設の設備機器の年代、機器の大きさ(容量)、エネルギー効率  → 現地調査や設計図書から確認します。
  3. ホテルの稼働状況や各設備の使い方  → ヒアリングと現地調査から確認します。

屋上での現地調査の様子

 

■ 年間の光熱費データから見えること

年間のホテルの電気、ガス、水道の使用量と、平成20~23年度に省エネルギーセンターが実施した「ホテル」に分類される省エネ診断の254件の建物の延床面積とエネルギー使用量を比較すると、図1のようになります。エネルギー原単位(kL/年)は平均値よりもやや少な目で、ホテル業界全体の中では小さな値との診断でした。レストラン、宴会場などの飲食部門の割合が少ないことと、客室のLED化、小型のコジェネ設備の導入などに取り組んできた効果かもしれません。

※ 1㎡あたり年間のエネルギー使用量を原油量(L)に換算して延床面積で割ったもの。原油換算することによって、電気とガスを合わせたエネルギー使用量で評価でき、1㎡あたりにすることで面積の異なる他の施設との比較が可能になります。

 

ちなみにメイプルイン幕張では、2016年の1年間に使用したエネルギーの内54%が電気、46%がガスから得ていました。(図2)主に給湯と客室の冷暖房がガス、照明や研修棟、ロビー等の冷暖房は電気で行なっています。

 

さらに、年間の光熱費を図3のようなグラフに示すことで、ホテルのエネルギー使用の傾向を把握することができます。図3を見ると、メイプルイン幕張では、暖房よりも冷房期間のエネルギー使用量が多くなっており、冷房時の省エネルギー対策が重要ということが分かります。

 

 

■ 10つの提案を待つ

以上のような現地調査と1年間のエネルギー使用量から分かったことを基に、後日10つの対策案をもって説明に来てくださることになりました。

今回のように実際にエネルギーを使う設備機器を対象とした対策の場合は、設備の取り換えという投資が必要になってきます。実は築25年を迎えたメイプルイン幕張では、設備の入れ替えの時期に来ています。順次老朽化したものから取り換えを進めていくにあたって、省エネルギー化という観点からも優先順位があるはずです。メイプルイン幕張にとっては、まさに今が省エネルギー対策のチャンス!であり、そのチャンスを有効に活用したいということから、この診断を受けたのです。

 

そんな経緯からも、設備を入れ替えるためのアドバイスを!と期待していたのですが、現場に来られた小坂氏からは、「新しい高効率な設備に入れ替えることに効果があることを示すことはそれほど難しくはない。今回の調査では、それももちろん項目としてあげますが、設備投資をしなくても、ちょっとした工夫でできる省エネ対策も探して伝えます。お金がかからなくてすぐにできること、そういった取り組みを伝えていくことも私の大事な役割だと思っています。」とのアドバイスを頂きました。その言葉とおり、現地調査では本当に細かいところまで調べてくださり、大規模なものからちょっとした工夫まで様々な有効な方法を提案してくださいました。

 

どんな省エネ対策の提案があったのか、その提案を受けた現在メイプルイン幕張での取り組みの様子については、次回のコラムでご報告したいと思います。どうぞお楽しみに!

 

 

■ 協力

◇一般財団法人 省エネルギーセンター https://www.eccj.or.jp/

 

■  監修

◇株式会社 みっつデザイン研究所    www.mittudesign.com
◇一級建築士事務所 エネクスレイン   www.enexrain.com

 

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